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2015年05月26日

先ほどまでこ

「誰だって苦手なもの嫌いなもののいくつかはあります。少佐はそれをひた隠しにして生きてこられたようにうちはお見受けしました。聞きかじったことじゃけえまちごうとったらごめんなさい、少佐は松岡中尉のお姉様じゃ言うて伺いました。長女とか兄弟の中で一番上言うんはやれ、『下のもんの手本になれ』じゃの『ええ学校に入らんといけん』だの言われてきつい立場じゃ言うんはうちもようわかっております、うちにも兄が居りましたけんね。ほいでも兄は、あの家の実の子じゃったからそげえにきつうもなかったでしょう。家の後継ぎとして当たり前のことばかり言われとったんですから」

とそこまで言って一旦言葉を切った。中佐は

「おにいさまは実の子?そしたらあなたは…どういうことでしょう…」

とこわいものでも聞くような表情になって兵曹に尋ねた。兵曹はしかし笑って

「うちはあの家の本当の子供じゃなかったんです。うちは――」reenex

と自分の生い立ちを語り始めた。そして、つい最近野田の家と縁を切り高田家に養子に入ったことを笑顔で話した。

松岡少佐は息をのんでreenex


「そんなことがあるのですか…しかしあなたは本当にご苦労なさったんですね」

と言って大きなため息をついた。高田兵曹は「ほいでも少佐、」と話を続ける。少佐は高田兵曹の瞳をじっと見つめる。

「うちはまだそれでもええ方です。毎日飯を食うことができあったかい布団に眠れ、一応不自由は無う暮らせました。でも――先ほどまでここに居った桜本兵曹はうちとなんぞ比べ物にならんほどのひどい扱いを受けとりました」

兵曹はオトメチャンの話もして、少佐はさらに大きな衝撃を受けたようだ。

「そんなことがあっていいのでしょうか、そんな話は小説本の中だけだと思っていましたが。∸-皆苦労をしてきている。私の苦労など」

そういって少佐は言葉を切った。

兵曹は

「少佐、うちがこげえな話をしたから言うて、少佐に『少佐の経験なんぞ大したことない、我慢せえ』いうンとは違いますけえ、勘違いはなさらんでつかあさいね。それぞれの経験はそれぞれにとって重いものです。うちは松岡少佐のほんとのお心が知りとうて自分と仲間の話を出してみました。少佐も出来たら…うちみとうな下士官風reenex



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